東北工業大学経済交流会 東北工業大学

不良債権の処理について 


平成10年10月20日(火)

演 題 「不良債権の処理について」  
講 師 寒澤法律事務所  弁護士 鈴木忠司氏

於:ブラザー軒

    債権回収の実務

1債権回収の基本

   A 債権(貸金、・売掛金等)を強制的に回収するためには‥・

      →債務者(含む保証人)の財産を差押するしかない

   B 財産がなければ差押もできない

      差押できる財産の所有者を増やす →連帯保証人

      事前に財産を確保する →担保物権の設定(根抵当権、質権等)

      事後に財産が喪失するのを防ぐ →仮差押

   C 差押するためには債務名義又は担保が必要

      債務名義を取得する →訴訟(裁判)による判決の取得

                    →公正証書の作成

      訴訟等の手間を省く →担保物権の設定(根抵当権、質権等)

   D 差押え・破産等による配当は債権者平等が原則

      優先的に配当を受けたい →担保物権の設定(根抵当権、質権等)

2 債権回収のための具体的対策

   A 事前の対策

      ア 担保物権の設定(根抵当権、質権等)

         利点 第三者に売られても差押できる

         債務名義なしで差押できる

         他の債権者より健先的に配当を受けられる

      イ 保証金の欲収

         相殺により優先的に債権回収できる

      ウ 連帯保証人   

         #必ず保証人本人に自署させること

   B 事後の対策(担保物権が不十分な場合)

      ア 債務者・連帯保証人の財産調査 

         不動産・動産

         債権…預貯金、給料、売掛金、工事代金等

      イ 仮差押

         差押前の債寮者の財産処分を防止

         担保(保証金)の必要…債権額の20〜10%

      ウ 担保物権・連帯保証人の追加

         通常はなかなか困難

          →仮差押等で圧力をかける

          →別紙「保証書及び分割支払のお願い」の利用

      エ 債音名義の取得

          訴訟(裁判)→判決

          公正証書の作成 →別紙「公正証書作成委任状」の利用

            #実印で押印・印鑑証明書添付

      オ 差押 ←担保物権の実行・債務名義による強制執行

   C 債権譲渡による債権回収

      債務者が有している債権(売掛金、工事代金等)を譲渡してもらう

       →直接取立て債権に充当できることとなる

       #債務者(譲渡人)の名前で債務者が有している債権の債務者(第三債務者)
         に対して内容証明郵便で債権譲渡通知書を送付する必要!

        別紙「債権譲渡通知書」を参照のこと

3 取引先倒産時の債権回収の基本

   破産されても抵当権等の担保権実行は自由!

   破産されても相殺は自由!

   保証人への請求は自由!

   ☆ 債務者が倒産しそうと知ったら、詐害行為、否認等を恐れず、
      早目に 各種の債権回収対策を行う!

4 倒産時の債権回収1(在庫品等の引揚げ)

   A 自社が販売した在庫品等を引き揚げる際の注意点

      Ql 相手方が拒否した場合に強行してよいか?

      Q2 相手方が不在の際に引き揚げるのはどうか?

          在庫品等が屋外に置いて有る場合はどうか?

          在庫品等が室内に有る場合はどうか?

      Q3 相手方従業員が黙認している場合はどうか?

   B 他社が販売した在庫品等を引き揚げる際の注意点

      Ql 相手方が拒否した場合に強行してよいか?

      Q2 相手方が不在の際に引き凌げるのはどうか?

          在庫品等が屋外に置いて有る場合はどうか?

          在庫品等が室内に有る場合はどうか?

      Q3 相手方従業員が黙認している場合はどうか?

      ☆犯罪にならないように注意

        別紙「預かり証」参照

5 倒産時の債権回収2(債権譲渡、相殺等の活用)

    Sは、Yに対し金1000万円の売掛金債権を有していたが、Yは、他にも多額の
   債務を負っており、手形不渡りを出してしまった。そこで、Yの財産を調査したところ、
   Yは、Zに対し金1000万円の請負工事代金債権を有していることが判明した。

      Q1 YがSに協力的な場合、Sは、どのようにして自己の債権国収を行ったらよいか?

      Q2 YはSに非協力的だがZがSに協力的な場合、Sは、どのようにして
        自己の債権回収を行ったらよいか?

      Q3 YZがSに非協力的な場合、Sは、どのようにして自己の債権回収を行ったらよいか?

      ☆ 金銭債権の譲渡は原則として自由であることを活用すると、迅速かつ効
         率的な債権回収が可能となる場合がある!

6 倒産時の債権回収3(取締役・監査役の責任追及)

   A 保証人になっている場合

      責任有り ←主債務者の破産・免責は影響せず

   B 保証人になっていない場合

      原則 責任無し

      例外 商法266-3

          職務を行うについて悪意又は重過失があったときは、損害賠償責任を負う。

          例 放漫経営等

「別紙1」

保証書及び分割支払のお願い

_________________殿

 下記債務者の貴殿に対する下記債務の支払が延滞して御迷惑をおかけしておりますが、私が連帯保証して貴殿に御迷惑をおかけしないように致します。 しかし、即時の一括支払が困難な状祝ですので、下記の支払方法により支払することを御承諾して戴きたくお願い致します。

               記

債務者名_______________

債 務  金額_____________円
      内訳

支払方法

口平成 年 月から毎月__日に金______円づつの分割支払い

   なお、端数は最終回に加算致します。

上記のとおり貴殿ご指示の場所又は口座にお支払い致します。また、一部でも支払いを怠った場合は、当然に直ちに残金全額をお支払い致します。

      平成  年  月  日

住所

氏名________________印

住所

氏名________________印

「別紙2」

公正証書作成委任状

下記債権者は_________を、下記債務者及び連帯保証人は__________を代理人とし、以下の準消費貸借契約条項に基づく強制執行認諾約款付公正証書の作成の嘱託、執行文付与、送達申請手鏡をする一切の権限を委任する。

      準消費貸借契約条項

第1条

 債権者と債務者は、債務者が債権者に対し平成  年  月  日現在下記債務を負っていることを確認し、これを同日付元金下記債務合計額・利息年 %の消費貸借の目的とすることを合意する。

              記

債務合計金____________円                               

      内訳

第2条 債務者は、債権者に対し、前条の元利金を、下記支払予定に従い、債権者方又は債権者の指示した場所に持参又は送金して支払う。               

              記

支払予定

第3条 次の場合、債務者は、債権者の請求により期限の利益を失い、
    債権者に対し残額を一時に支払う。

    1 債務者が前条の弁済を一部でも怠った場合

    2 債務者が差押、仮差押又は仮処分を受けた場合

    3 債務者が破産、和議又は会社更生の申立をし又は受けた場合

    4 債務者が振出した手形小切手が不渡りとなった場合

第4条

遅延損害金は、年      %とする。

第5条 連帯保証人は、債権者に対し、本契約から生ずる債務者の一切の債務を連帯して保証し、債務者と連帯して支払うことを釣した。

第6条 債務者及び連帯保証人は、本契約の支払を怠ったときは直ちに強制執行を受けても異議はない。

    平成  年  月  日

              債 権 者   住所

                        氏名                     印

              債 務 者   住所

                        氏名                     印

              連帯保証人  住所

                        氏名                     印

              連帯保証人  住所

                        氏名                     印

「別紙3」

        債権譲渡の通知書

AB市SY区Z町 丁目 番 号

 株式会社 C D E 御中      

             平成10年5月27日            

                     仙台市 丁目 番 号

                     甲  乙  丙 株式会社

                     代表取締役社長・・・・・

前略、弊社が貴社に対して有している下記の譲渡債権は、都合により下記の譲受人に譲渡致しましたので、今後は譲受人にお支払い戴きたく通知敦します。

               記

譲受人 仙台市青葉区  町 丁目 番 号

      ABC 株式会社

譲渡債権

      金__________円

債権の内容

 平成10年1月から本日まで売り渡したお菓子等の売 掛金残金

注;26字20行で配達証明付き内容証明郵便

「別紙4」

物品受取証

平成  年  月  日

__________

 下記の受取物品を受け取らせて戴き、次の丸を付したとおり処分させて戴きます。

   1 留保していた所有権に基づき受け取らせて戴き、債権に充当さ せて戴きます。

   2 契約解除に基づき受け取らせて戴き、債権に充当させて戴きま す。

   3 債権の担保として受け取らせて戴き、債権に充当させて戴きま す。

(受取物品)

承 諾 書

 上記の処分を承諾致します。なお、債権に充当される金額(物品の評価)はおまかせ致します。
平成  年  月  日

__________



講師 鈴木忠司氏プロフィール

昭和29年 8月  宮城県加美郡中新田町で出生

昭和48年 3月  宮城県古川高等学校卒業

昭和48年 4月  明治大学法学部入学

昭和52年 3月  明治大学法学部卒業

平成 3年10月  束京都新宿区の阿部博法律事務所勤務を経て司法試験合格

平成 4年 4月  司法研修所入所

平成 6年 3月  司法研修所卒業

平成 6年 4月  弁護士登録

            仙台市青葉区の宮澤法律事務所に勤務現在に至る

            現在、弁護士3名、事務スタッフ4名で業務遂行

                     宮澤法律事務所  弁護士 鈴木忠司

                     仙台市青葉区上杉1−4−30電話 022−214−2424

                                       FAX  022−214−2425